大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所八王子支部 平成2年(少)3028号 決定

少年 D・K(昭51.4.6生)

主文

少年を養護施設に送致する。

理由

(非行事実)

警視庁○○警察署長作成の平成2年10月18日付少年事件送致書中の「審判に付すべき事由」欄記載の事実及び検察官作成の平成2年10月30日付送致書指示の犯罪事実のとおりであるから、ここに引用する。

(適用法令)

ぐ犯につき少年法3条1項3号イ乃至ニ、占有離脱物横領につき刑法60条、254条無免許運転につき道路交通法64条、118条1項1号

(処遇の理由)

少年の性格、環境、成育歴、行動歴等は、少年調査票並びに鑑別結果通知書記載のとおりである。少年は、家庭的に恵まれず、生後1年にして実父が蒸発し、昭和62年3月17日に両親が離婚し、少年の親権者を父親にすることとして父方に引き取られ、母親は、行方不明となった。しかし、その後父親が実母の居所を突き止めて、少年を実母方に追いやったが、その後実母と一緒になった継父は、子供嫌いで、少年は、継父から体を触られたりなど、嫌がらせをされ、家に居たたまれず、度々家出を繰り返すようになっていった。

少年は、実母に対する愛着が強く、常に実母の身を案じ、自分が家にいれば、母親が継父から暴力を受けることになると、心配したりしている。母親の方は、家出していた少年の姉がシンナー漬けになって戻ってきたので、そちらの更生も考えなければならないということで、とても少年にまで手が回らないといい、今回も、経済的な理由で一度も鑑別所に面会にいかず、少年の施設収容を望んでいる。少年は、今回占有離脱物横領や無免許運転などの非行を起こしたり、他生徒に対し暴力を振るったりしているが、非行性としては軽く、家庭的な雰囲気の中で温かく保護されさえすれば、非行も治まるものと思料される。

少年には、家庭に代わる保護を与える必要がある。

よって、少年法24条1項2号により主文のとおり決定する。

(裁判官 松田光正)

〔参考1〕 検察官作成の占有離脱物横領、道路交通法違反の送致事実

一 犯罪事実

第一 被疑者D・K子、同D・O子は共謀のうえ、平成2年10月11日年前5時30分ころ、東京都調布市○○町×丁目×番地×空地において、被疑者不詳が窃取し同所に置去りにしたA所有にかかる原動機付自転車1台(時価20,000円相当)を発見拾得しながら、これを警察署に届出る等の正規の手続きをとらず、自己の用に供するため着服横領したものである。

第二 被疑者D・K子は、公安委員会の運転免許を受けないで、右同日午後0時10分ころ、東京都調布市○○町×丁目×番地先路上において、右原動機付自転車を運転したものである。

二 犯罪の情状等に関する意見

(1) 被疑者D・K子は、実母・継父・姉・妹・弟との6人家族で現在、○○中学校2年生である。

被疑者は、継父との折り合いが悪いことから姉D・O子と共に殆ど家に寄りつかず、公園、空地等で野宿したり、友人宅を泊り歩いたりして登校もせず、乱れた生活を送っている。

本件は、姉D・O子と野宿しての帰宅途中、駅前の空地に直結状態で放置してあったオートバイを自宅までの足代わりとするために犯行に及んだ事犯である。

被疑者は、過去に補導歴6回、非行歴2回を有し、10月18日にはぐ犯送致され、現在審判継続中であり、保護者にあっては監護の限界を申し立てており、このまま放置すれば再非行のおそれが強いので、性格の矯正と環境調整のため初等少年院(長期)送致の措置が相当と認められる。

(2) 被疑者D・O子は、D・K子の実姉で都立高校1年に在学中であるが、校内で起こした暴力事件により現在停学中である。

被疑者は妹D・K子と同様、継父との折り合いが悪く殆ど家に寄りつかず、妹と共に野宿したり友人宅を泊り歩いたりして乱れた生活を送っている。

本件は、妹D・K子と同様の理由から犯行に及んだ事犯で、過去に補導歴2回、非行歴2回を有し保護者にあっては、監護の限界を申し立てており被疑者の性格等から再犯のおそれが強いので、保護観察処分の措置が相当と認められる。

〔参考2〕鑑別結果通知書〈省略〉

〔参考3〕少年調査表〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例